生きものやじろべえ・その2 細胞の大きさ 個体の大きさ

生きものやじろべえの第2弾は、2匹のイモリと2つの輪っかが釣り合うやじろべえ。この輪っかは何を隠そう腎細管断面図なのです!・・・って言ってもあんまり分かる人はいないですかね。僕も初めて見る単語でした。ともあれイモリの体の中のどっかにある細い管をどうにかして輪切りにしたもんだと思ってください。よーく見ると、片方の輪っかはツルリとした輪郭に丸い型押しが一カ所、もう一方の輪っかは5カ所でくびれていて、そのそれぞれに5つの型押しが入っています。今回のポイントはここ。

 

ヒトは22対の常染色体と1対の性染色体の計46本の染色体を持つ、なんて言い方、よく聞くと思います。この「対」って のは大ざっぱに言うと、似たような働きをする染色体が2本ペアになってるって意味で、こういうタイプの染色体を持つ生きものを二倍体っていいます。動物はたいがい二倍体なんだそうですが、例えば蟻や蜂のオス、俗に言う働きアリや働きバチは染色体を1セットしか 持たない一倍体で、植物の場合は三倍体や四倍体なんて例がざらにあるんだそうです。染色体のセットの数は細胞のサイズにも影響し、数字が大きいほど細胞も大きくなるのが一般的。その性質を利用して、人工的に作った三倍体の魚を養殖する試みもなされているそうです。刺身の量が二倍体の1.5倍になるわけですね。

 

さて今回のイモリ。実はこの2匹、実験的につくった一倍体のイモリと五倍体のイモリです。これまでの例からすると、五倍体のイモリは野生型(二倍体)のイモリより大きく、一倍体のイモリは逆に小さくなるはず、だったんですが、やってみるとそのサイズにはほとんど差が見られませんでした。詳しく調べてみると、五倍体のイモリは一つの細胞のサイズを小さく、一倍体のイモリは大きくす ることによって、体全体のサイズを一定に保っていることが分かりました。やじろべえの重りの輪っかに入っている丸い型押しは細胞核。一つの器官を作るのに、一方は1個の細胞を、一方は5個の細胞を使うことによって、体全体のサイズを保つためのバランスを取っているわけですね。

 

なんでイモリだけがそうなんのかってのはよく分かってないそうなんですが、与えられた条件の中で、どうにかやりくりしてくのが生きものってことなんでしょうかね。おもしろいです。