生命誌の樹・第2回 多細胞動物


今回は「多細胞動物」をお届けします。パッと見では前号とあんまり変わらないように見えちゃいますが、年代の区切り方も枝分かれの仕方も、もちろんずいぶん違います。ぜひ定期手に取って見比べていただきたい。

 

現在生きている動物の門(分類の一番大きなくくり)のほぼ全ては、約5億4200万年前から5億3000万年前にかけての、地質学的には決して長くない期間に突如として現れたことが、化石記録から分かっています。「カンブリア爆発」として知られるこの現象は、90年代半ばにベストセラーとなった、スティーヴン・ジェイ・グールドの「ワンダフル・ライフ」によって有名になりました。テレビ番組のカンブリア宮殿はもちろんその後。今から見ると勇み足だった記述もいろいろあったようですが(詳しくは「ドーキンス VS グールド(ちくま学芸文庫)」をどうぞ。2人の論争やキャラを知っているととても楽しめます)、僕も当時夢中になって読み、生物学のみならず。科学的なモノの見方と考え方をずいぶん学んだ気がします。

 

その後の分子遺伝学の研究により、この時期に体のつくりの大進化をもたらした遺伝子の多様化は、実はカンブリア爆発に先立つこと3億年以上も前から始まっていたことが分かっています。そんな訳で今回の系統樹の見どころは、分子生物学的に見ると既に分岐が終了していたカンブリア爆発そのものじゃなくって、9億年前から6億年前にかけてのまだ化石に残るような生き物が存在しなかった時代に、DNAが変異して枝があっちこっちに分かれたようす。今回も職人さんが苦労をして抜いてくれた34本の枝のうち、魚や鳥、そして僕らヒトといった脊椎動物につながる枝はたった1本しかないことにも注目しながらぐるぐる回して眺めてください。