生命誌の容器・第1回 生命のゆりかご・ロストシティ


 

2018年度のテーマは「容」。寛容さや、いい意味でのゆるさを表す漢字です。この一文字から発想を広げて、紙のおまけのテーマとして「生命誌の容器(うつわ)」というコンセプトをひねくり出しました。

 

第一回目は「生命のゆりかご・ロストシティ」。生命がいつどこで誕生したのかという大問題にはいまだに答えは出ていませんが、近年は、マグマに温められた熱水が深度数千メートルの深海で吹き出す場所、「アルカリ熱水噴出孔」が有力視されています(ちなみに地上で吹き出すと「温泉」です)。2000年に大西洋で見つかったアルカリ熱水噴出孔は、熱水とともに吹き出す鉱物が積み重なった数十メートルもある塔が摩天楼のように立ち並ぶその姿から「ロストシティ(失われた街)」と名付けられ、以来同じタイプの噴出孔をこう呼ぶようになりました。

 

それ以前に知られていた「ブラックスモーカー」と呼ばれる噴出孔が酸性の熱水を吹き出すのに対し、ロストシティから吹き出す熱水はアルカリ性ってところがミソなんですが、その辺を書き出すときりがありません。興味のある方は是非季刊誌を申し込んでください。

 

組み立てはこのシリーズでは初めての差し込み式、15分で組み立てられるロストシティをパカっと開くと、40億年前に生命を生み出した(と考えられている)お湯と水との不思議な化学反応が現れます。より詳しく知りたい方は、ニック・レーン「生命、エネルギー、進化」(みすず書房)をどうぞ。文学部出身の僕でもぎり理解できる謎解きに満ちた、そこらのミステリよりずっと興奮する一冊です。